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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
身を伝道に捧げている以上は或は多少社会を教化しないとも限らない。斯うなって来ると一個の麦藁帽子もその影響の及ぶところ実際広い。
然う歩きもしないが兎に角立ち詰めだったから道頓堀で休んだ時は寛いだ。
「坊ちゃん、お腹が空いたでしょう? しかし川料理はこの柴藤に限るんでね」
と小川さんは僕とお父さんに振り分けに言った。
「舟半家半だね、この座敷は。惜しいことに水が汚い」
とお父さんが顔を出した。
「風流というよりも実利が主意さ。この辺は殊に土一升金一升だから川でも利用しなくちゃね。何しろ筋向いが宗右衛門町、背後が九郎右衛門町に難波新地と来ている。君、この辺の夜景に親しまなくちゃ高級の大阪趣味が分らないよ」
と小川さんが力説した。
「低級はどんなのだい?」
「低級娯楽で満足するならこの道頓堀には芝居小屋が並んでいるし背中合せの千日前には楽天地なんていう興行物のデパートメント・ストアがある。低級高級ともにこの辺が大阪趣味の中心地だね」
「君は何方だね? 高級らしいね」
「家内には低級に見せかけて芝居などへも僕の方から言い出して連れて行く。鴈治郎なんて凸助は嫌いだけれど、矢っ張り紙治は大文字屋が天下一品だねなどと調子を合せる。