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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

考えて見ると先刻から姿が見えなかったようだ。

「何うしたんだろう?」

と店並を一軒々々に覗いて歩いたが、見つからない。

「子供さんじゃなかけん、案じることはござッせん」

と男衆が言った。しかし気になるのでその儘宿へ引き返すと、

「此処は松本屋というんだってね」

と三輪さんは寝転んでお茶を飲んでいた。何か買物をして来たらしかった。

「何を言っているんだい? 心配したぜ」

と団さんが詰った。

「此処の家の名前を知らなかったから僕も一寸心配したよ。松原神社を覚えていなかろうものなら迷子になるところだった。何処へ行っても宿屋の名前丈けは知って置く必要があるね。今女中に訊いて漸くホッと一息ついたところさ」

「もう家が分ったんだから、気味の悪いことを言わずに気を落ちつけ給え。氷で些っと頭を冷しちゃ何うだい?」

「家の名を聞いて漸く安心したところが宜い。日本人で愛蘭式失言の名人だから豪いよ」

とお父さんが笑った。

第十三回

左側に美しい山の眺望が続く。家の床の間の掛物を思い出させるような岩石や竹林がところ/″\に見える。

「好い景色ですね。真正に絵のようだ」

と僕が言った。

「否、景色が絵に似ているんじゃなくて、絵が景色に似ているのよ」