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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

第十三回

と田鶴子さんは僕を凹ませた。団さんの娘丈けあって時々こんな小理窟を言う。

厳木駅で「佐容姫屋敷跡、東南一里(徒歩約一時間)」という案内標を見かけた時、

「佐容姫って何だっけね?」

と団さんが訊いた。

「良人の後を恋慕い、石になったる松浦潟、領巾振山の悲みも……」

とお父さんは浄瑠璃の文句をその儘に答えた。

「石になった口かい? 僕は蛇になったんだと勘違いをしていた」

と三輪さんが言った。

「蛇は清姫で日高川よ」

と田鶴子さんは婦人として万一の場合の化け方を一々心得ている。

鬼塚へ来ると直ぐ右がその松浦川で次は唐津、下りるが早く博多屋というのへ案内された。

「暑い/\。斯う暑いと慾も徳もなくなってしまう」

と言って畳の上に落ちつくとその儘横になりたがる団さんを促して、僕達は暫時休憩の後、例の通り俥を連ねて見物に出掛けた。

「車屋さん、此処も鉄道馬車かい?」

と団さんは町中の線路へ差しかゝった時訊いた。

「此処んとは軌道車でござす」

と車屋が答えた。折から真黒な機関車が漏斗形の煙突から黒煙を吐きながらやって来た。トコ/\/\と十九世紀の音を立てゝ悠長なものだ。

「あれでござす。