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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
先を越されました上に泣かないので一向入りもなく連中這う/\の体で戻って参り、石を此処へ引っぽかした儘姿を匿してしまいました。以前はこの山の上にあったのですが、彼処まで上げるには費用がかゝるでこの通り誰も手をつけません」
「大失策だったね。それでこそ静岡県人の名を辱めないというもんさ。しかし交通不便の時代にこんな大きなものを東京まで持っていったんだから、確信は豪いもんだ」
と三輪さんが感心した。
「さて、観音寺の住職に育てられました男の子は十五歳の折に母親の仇を討ちたいと志ました。すると或晩観音さまが夢枕にお立ちになって、『音八、音八、仇を討ちたいとあらば磨師となって時節を待て』と申す有難いお告げがございました。そこで音八は大和へ参って、刀磨ぎの店に住み込みます。光陰矢の如く、十年の月日が過ぎました。或日のこと年の頃六十ばかりの武士が刀の手入れを頼みに参りましたで、音八が鞘を払って見ますと、切先に少々刃こぼれがありました。『業物ではございますが、惜しいところに疵がありますな』と申しますと、武士は、『指折り数えれば早二十五年の昔、小夜の中山で女を斬ったことがあるが、これはその折石に当っての刃こぼれじゃ』