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このこをのこして
この子を残して
永井 隆
「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页
みんな懐からふかし芋をとり出し、そこらに生えているかやの葉をちぎって、その葉をなめて芋を食った。潮風が絶えず吹いているので、かやの葉はしょっぱかった。陽が高くなると、牛は牧に放ったまま、子供たちは浜へ降りていった。浜にも遊びの種は絶えなかった。にな貝のからをいそぎんちゃくに差しこむと、あわててしぼんで、まるで巻きたばこをくわえたようになるのがことに面白かった。夕日が落ちるころにはまた牧へ登って見送った。陽の落ちるのはずうっと向こうの、あちらは上海だという方角の海だった。海も真っ赤になった。それで沖に浮いている舟が焼けはしないかと小さい子が心配した。日が暮れると、子供たちはそれぞれ自分の牛を呼んだ。牛はよく声を聞き分けて、帰ってきた。道も牛のほうがよく知っていたから、綱に引っぱられておれば、牛が先に立って牛小屋まで連れてきてくれるのだった。――
カヤノはそれを思い出して、また一枚描き上げた。
三枚目、クレヨンを手に持つと、ためらいもなく、ぐいとなする。こんどはどうやらお家らしい。赤の屋根ができ、壁ができ、壁に窓が開き、電灯がぶらさがり、屋根に煙突が立って、ご飯をたく煙がもうもうと上がる。