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このこをのこして

この子を残して

永井 隆

「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页

青空文庫

切られた枝

両脚の血のめぐりは悪くなって、軽いひきつけがくる。

――そこで私はうめく。さすってもらうと少しは楽になる。このさすり方がむつかしい。強くさすると骨にこたえる。やわらかにさすらねばならぬ。そんなに面倒なら自分でさすればいいと思うが、腹が木魚のようにふくれ出しているので、体が曲がらず、手がとどかないのである。大人にさすってもらうとかえって痛い。それで訪問客のあるときにはうっかりうめくことができない。さすり役は子供にかぎる。誠一の手もカヤノの手も肉が柔らかで、芯の骨もしなやかで、力も弱く、さすってもらうには最も適している。二人のわが子にさすってもらっていると、まるで自分の手で思うままにさすっているようだ。――これが骨肉というものであろうか?

さすってもらううちに、いつしか痛みも忘れ、私は快い眠りに入りゆく。

夕食のあとなどでは、子供のほうが先に眠りにおちいる。――さする手がおのずから休み休みになり、やがて止まり、ぐっと小さい体重が脚の上にかかってきて、安らかな寝息が聞こえてくる。

切られた枝

門辺のつるばらが枝も垂れるほどに咲いた。これは戦災を受けたあくる年の春、神学校から枝をもらってきて、まだ家も建てぬ焼け跡に差しておいたものである。