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このこをのこして
この子を残して
永井 隆
「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页
このことは、一瞬にして妻と財産を失っている私がいちばんよく知っている。
けれども、とにかくどこかで、だれかに、なんとか養っていただくことになるだろう。ひょっとすると孤児収容所に入れられるかもしれない。
孤児収容所……ああ、私は寒気がしてきた。あんな所へこの子が入れられたら……。
全国の孤児収容所の子供の逃亡率は半分以上だとのことである。半分以上の子供たちは、逃げ出しては捕らえられ、入れられてはまた飛び出すという。ラジオや新聞で、「浮浪児狩り」という言葉が用いられた。狩るとは野獣に対して用いる言葉である。いつの日か私の誠一やカヤノが野獣扱いを受けるのであろうか? ――ああ! そして逃亡を防ぐため裸にしておかれるのであろうか? 鉄格子をはめた部屋に入れられるのだろうか? ああ「収容」という言葉の冷たさよ。
もしあの日、妻のみならず、私も原子の火に滅びていたなら、おそらく今ごろは誠一もカヤノもその収容所に収容されていることだったろう。そして二人とも度々逃げ出しては野獣として狩られていることだったろう。思っただけでも五体が震う。
孤児収容所はこの原子野の小屋に比べたら設備もいいし、職員もそろっており、給与も上等である。