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このこをのこして
この子を残して
永井 隆
「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页
そのうえ、原子放射線によってひき起こされる原子病の苦しみは、並み大抵の生やさしいものではなく、生身をちぎるばかりの苦痛があるものと知っていては、なるべくならば、かかりたくないと思うのが人情であろう。だから私は、原子病の予防にはずいぶんと細かく気をつかった。生まれつき気の弱い、びくびくもので、学校時代には落ちるのが怖さに鉄棒体操のできないほどの私であった。原子病を怖がったのは言うまでもない。
このごろではレントゲン器械も良くなって、発生管球は金属でよく包まれ、小さな窓から必要なレントゲン線の束だけが出るようになっているので、あまり危なくないが、昔は私たちは裸管球を使ったもので、それらは四方へ向かって恐ろしいレントゲン線を放射していた。この放射線は物体に当たると、さらに二次放射線を発生散乱する。この散乱線がまたも物体に当たると、そこからさらに放射線を出す。このために放射線室の中は管球の焦点から出てくる主放射線のほかに、おびただしい二次散乱線が前後左右から、あたかも十字砲火のように、飛び交う。
この放射線の細胞破壊力はすばらしいもので、一定量ではガンのような病気を治すが、量を過ごすと健康な部分を病気に変えてしまう。