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このこをのこして
この子を残して
永井 隆
「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页
そろえてあわただしく畑の上をひとまわりして帰ってくると、物干ざおに三羽並んでとまり、チュンチュン鳴き交わし、三羽すり寄り、大きいほうが負けて横へ横へとおされるうち、一羽はチュンと叫んで逃げ、残る二羽が仲よくあくびをし、片脚をのばして羽をつくろい、やがて目をつむってしゃがみこむと、ぷっくら膨れてうたたねする。――この一羽のすずめの、足の動きひとつ羽の動きひとつ見逃さず、神はじいっと愛の目をそそいで守っていらっしゃるのだ。お忘れになることはないのだ。なぜなら、その一羽を神はみずから愛によって創造なさったからである。つまり真の大親だからなのである。
すずめさえ、このとおり、ましてすずめにまさる人の子の誠一とカヤノ、なんでお忘れになることがあろう? 片時といえども神の愛の目が外れることがあろうか?
この子の髪の毛の数さえ神は知っている。それもそのはず、神がその髪の毛の一本一本、愛をこめて創造なさったのだから……。誠一みずからでさえ、己が頭に幾千幾百本の髪が生えているか知らない。それは誠一が髪の毛を創ったのではないから……。父の私もその数を知らぬ。私は創造者ではなかったから……。