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さまようまちのさまよういえのさまようひとびと
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
国枝 史郎
「探偵」1931(昭和6)年7月~11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,916 字 · 75 页
果たしてその日の正午頃、繁青年は訪ねて来ました。
不安と焦燥とにオドオドして、昨日より悲惨に見えました。意志も何も無くなって了った。そんな人間に見えました。
(こんな人間には活を入れる意味で、高飛車に出なければ成功しない)
こう私は思いましたので、
「君、そこへ掛けたまえ。……さて、君に訊ねるが、君の属している青幇の本部、何処にあるのか云って見給え!」
こう云って睨みつけてやりました。
「…………」
繁青年は答えませんでした。
「城内か、それとも四川路か※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
以前にもお話ししたとおり、私は私の職業柄、青幇に就いては徹底的に、研究をして居りましたので、上海に幾個本部があるか、その本部は何処と何処にあるか、そんなこともおおよそは知っていました。
繁青年は黙っていました。
「云えないことはあるまい、云って見たまえ!」
「城内です、城内の……」
「それだけでよろしい、城内だけでよろしい。……で、会長は何んていう奴かね」
「知りません、知らないのです!」
繁青年は強く云って、私の顔を怨めしそうに見ました。
私も無理には訊ねませんでした。
幹部で無ければ本部の会長の、何者であるかを知ることが出来ないという、そういう組織になって居り、もし又喩え知っていたにしても、それは絶対に云うことが出来ず、云ったが