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さまようまちのさまよういえのさまようひとびと

さまよう町のさまよう家のさまよう人々

国枝 史郎

「探偵」1931(昭和6)年7月~11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,916 字 · 75 页

青空文庫

十四

最後云った人間は、例外なく命を取られて了う。――そういうことになっていることも、私は知っていたからです。

聞く可きことが他にないので、繁青年に云ってやりました。

「昨日僕は初枝さんとも逢い、絹子夫人とも逢って話した。そうして僕は云ってやった。初枝さんの命は私の力で、大概取り止めてお目にかけると。で、今度は君に云おう。君がどんなに初枝さんの命を、八月二十日に取ろうとしても、僕が決して取らせないと。さあもうよろしい、今日は帰えりたまえ」

十四

その夜私は家を出て、城内へ這入って行きました。

城内というのは云う迄も無く、支那町のことでありまして、上海中で物騒な方面では、代表的のところであり、白昼ホールダップが行われたり、人攫いや殺人が行われたり、そうして一旦行われるや、容易のことでは犯人が出ないと、そう云われている所です。

夜は商売をしていません。

昼間は殆ど狂気じみているほど、騒がしい賑わしいこの一画も、夜はひっそりと静まり返えり、人影など滅多に見ることが出来ず、見えれば夫れは九分九厘まで、悪漢でなければならないのです。

露路などから突然飛び出して来て、矢庭に短刀でドテッ腹をえぐり、ほんのハシタ金を奪うために、――人間の命を犬や猫より、安くつもっているような、そんな凶悪の人間ばかりが、時たま彷徨っていると思えば