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だまされたむすめとちょうのはなし
だまされた娘とちょうの話
小川 未明
「小学六年生 4巻2号」1951(昭和26)年5月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,555 字 · 9 页
」と、かの女は、耳まで赤くしながら、ぶしつけに聞きました。奥さんは、びっくりしたふうもせず、
「ふつうではありませんか。あの方は、ここはお給金が安いから、といっていましたが。」と、答えました。
その後、まもなく、お竹が、口入れ屋の世話で、ある私立病院の病室にいた、子供の付き添いとなったのも、どうせ勤めるなら、すこしでも国へ送るのにお金の多いほうがいいと思ったからでした。
外から見ると、宏壮な洋館造りの病院でしたけれど、ひとたび病棟に入ったら、どのへやにも、青白い顔をして、目の落ち込んだ病人が、床の上で仰臥するもの、すわってうめくもの、笑い声ひとつしなければ、長い廊下を歩く足音ぐらいのものでした。あのいきいきとしたにぎやかな町からきたものには、まったく別の世界であるとしか感じられなかったのです。いわば、ここは、病人だけがいるところであり、健康なもののじっとして、いられるところではありませんでした。
「ああ、いくらお金になっても、私のくるところでなかった。これにくらべれば、たとえ口やかましい奥さまの家でも、がまんできたのに。」と、お竹は、ぼんやりとして後悔にくれたのです。