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だまされたむすめとちょうのはなし
だまされた娘とちょうの話
小川 未明
「小学六年生 4巻2号」1951(昭和26)年5月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,555 字 · 9 页
こういわれると、日ごろ気立てのやさしいお竹は、自分のできることは、どんなことでも、してやらなければならぬという気持ちになるのでした。
ある日のこと、古くから、この病院へ出入りして、炊事婦や看護婦と、顔見知りという老婆が、ふいに、お竹のもとへやってきて、前に約束があるのだから、少年の付き添いを代わってもらいたいといいました。
「だしぬけで、お気の毒ですけれど、ほんとをいうと、あんたのような、若い、きれいな方は、こんなところにいるものでありませんよ。どんないいお屋敷でも、また、キャバレーでも、おもしろくて、お金になるところがいくらもあるではありませんか。私のような、おいぼれは、いくところがないから、しかたなしにこんな薬くさい、陰気なところにいるけれど、私だって、若ければ、一日だってがまんできやしない。」と、老婆は、もっともらしくまくしたてました。
けれど、お竹は、少年がなんというだろうかと、その方を見ましたが、老婆とは、かねて知り合いとみえて、だまっていたので、いまさらこの病院に未練のあるはずがなし、その日のうちに、暇をとって出ることにしました。
かの女は、老婆が、自分を美しいといったのが、いつまでも頭にあって、けっして、わるい気がしませんでした。