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とむらいきかんしゃ

とむらい機関車

大阪 圭吉

大阪圭吉『とむらい機関車』。同一底本的分册已合并为一书。收入:とむらい機関車、死の快走船、気狂い機関車、闖入者、三狂人、白妖、あやつり裁判、銀座幽霊、動かぬ鯨群、寒の夜晴れ、坑鬼。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,729 字 · 371 页

青空文庫

何処にでも見受けられるありふれた現象だ。例えば、潮の引いてしまった岩の上にでも、砂の上にでも――。

「なんだ、泡の行列か……」

思わず云いかけた私も、しかし意味ありげな東屋氏の視線に合って、直に彼の云おうとしている意味を汲み取った。

「ああなるほど、君は底に粘土質の泥と長海松の生えている海岸の水面に、この茶褐色の泡が浮いていた、と云うんだね?」

「うむ、だが僕は、もっと素晴らしい事実に気がついたんだ」

そう云って今度は下男に向って、

「この辺は、波は静かでしょうね?」

「ええ、ま大体……」

「昨夜は?」

「海霧があったほどですから、無論凪でしたでしょう」

「よし、ともかく船を出そう」

東屋氏は進み出た。

この速製の探偵屋に最初のうち少からず危気を覚えていた私も、いまはもう躊躇するところなく、下男と力を合わせて白鮫号を水際へ押し出した。

やがてヨットが静かな磯波に乗って軽く水に浮ぶと、東屋氏は元気よく飛び乗った。そしてなにかひどく自信ありげに、

「さあ。これから、一寸興味ある実験を始める。船の水平を保つように、各自の位置を平均して取ってくれたまえ」

東屋氏は上機嫌で船縁に屈み込むと、子供のように水と舷側の接触線を覗き込んでいたが、不意に立上って私をふん捉えた。