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とむらいきかんしゃ

とむらい機関車

大阪 圭吉

大阪圭吉『とむらい機関車』。同一底本的分册已合并为一书。收入:とむらい機関車、死の快走船、気狂い機関車、闖入者、三狂人、白妖、あやつり裁判、銀座幽霊、動かぬ鯨群、寒の夜晴れ、坑鬼。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,729 字 · 371 页

青空文庫

坑鬼

一

室生岬の尖端、荒れ果てた灰色の山の中に、かなり前から稼行を続けていた中越炭礦会社の滝口坑は、ここ二、三年来めきめき活況を見せて、五百尺の地底に繰り拡ろげられた黒い触手の先端は、もう海の底半哩の沖にまで達していた。埋蔵量六百万噸――会社の事業の大半はこの炭坑一本に賭けられて、人も機械も一緒くたに緊張の中に叩ッ込まれ、きびしい仮借のない活動が夜ひるなしに続けられていた。しかし、海の底の炭坑は、いかなる危険に先んじて一歩地獄に近かった。事業が繁栄すればする程地底の空虚は拡大し、危険率は無類の確実さを以って高まりつつあった。人々は地獄を隔てたその薄い命の地殻を一枚二枚と剥がして行った。

こうした殆んど狂気に近い世界でのみ、始めて頷かれるような狂暴奇怪な形をとって、異変が滝口坑を見舞ったのは、まだ四月にはいったばかりの寒い頃のことであった。地上には季節の名残りが山々の襞に深い雪をとどめて、身を切るような北国の海風が、終日陰気に吹きまくっていようと云うに、五百尺の地底は、激しい地熱で暑さに蒸せ返っていた。そこには、一糸も纒わぬ裸の世界があった。