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はたしじょう

はたし状

山本 周五郎

「週刊朝日 新年増刊」朝日新聞社、1951(昭和26)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,525 字 · 39 页

青空文庫

そういう簡単なものであった。

――向うから破談を申し込んで来た。

第二はそこを繰り返し読み、あり得べき理由を想像してみたが、どこをどう裏返してみても、これと思い当るようなものがみつからなかった。

「なにかの間違いではないだろうか」

彼はちょっと茫然として呟いた。

「それとも誰かの悪戯ではないか」

手紙が来て二、三日のうちは、そのことに実感がもてなかった。なんとなく騙されているような気持だった。それからしだいにおちつかなくなり、苛立たしい疑惑に悩みだした。

――母へ問合せようか。

――いっそしのへ手紙をやろうか。

母としのへ、幾たびか衝動的に手紙を書きかけたが、そのたびに途中で筆を投げた。書いてやってもむだだろうという気がした。こちらから手紙をやって返事を呉れるくらいなら、黙っていても向うから事情を云ってよこす筈である。殊にしのは当事者であるし、ごく幼い頃からきょうだいのようにつきあって来た。他の婚約者のばあいとは違って、たいていなことは遠慮なく云える筈である。それがなんとも云ってよこさないのは、云ってよこせない事情があるのに相違ない。

――では藤島へきいてやろうか。