轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
めおとちょう
めおと蝶
山本 周五郎
「講談倶楽部 春の臨時増刊号」大日本雄弁会講談社、1950(昭和25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,977 字 · 47 页
「そんなにむきになって云いわけをするほどのことか」
良平は唇で笑いながらこちらを見た。信乃は頭がくらくらしてきた。叫びだしたくなった。納戸の襖をあけて、声かぎりに、「さあごらんなさい、あの方は此処にいます。わたくしが匿まっていたのです」と絶叫したくなった。それは衝動のように激しく、殆ど立ちそうになったが、そのとき良平が首を振って、退屈そうに盃を持ちながら云った。
「――女は詰らぬことに気を使うものだ」
そしてそれからはいつものように、冷やかな顔で黙って飲み、まもなく寝所へ立っていった。
――助かった。気づかれなかった。
体じゅうの筋がばらばらになるような、深い安堵と気おちとで、信乃はやや暫らく立つこともできなかった……。その夜は久方ぶりに熟睡した。あの危うい瞬間にも良人に感づかれなかったという安心のためだろう、朝のねざめもすがすがとして、頭がこころよく冴え、体にも力が漲るように思えた。
登城する良人を送りだしてから、信乃が納戸へ食事を持ってゆくと、知也が脱出したいと云いだした。良平の勤めぶりで察すると、或る程度まで警戒はゆるんでいるらしい。そうでないにしても、日が経ち過ぎると手筈が狂うということだった。