轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

めおとちょう

めおと蝶

山本 周五郎

「講談倶楽部 春の臨時増刊号」大日本雄弁会講談社、1950(昭和25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,977 字 · 47 页

青空文庫

「そう思っているのよ、でも……そんなに早く気持を変えることはできませんわ」

信乃はやっぱり静かに笑って答えた。

「もう少しそっとしておいて下さいまし、だんだんおちついてきましたから、もうすぐ元気になりますわ、……若いんですもの」

五月、六月と経つうちに信乃はしだいにようすが明るくなり、化粧などもするようになった。一日じゅう母屋のほうにいて、厨で庖丁を持ったり、母や兄嫁や妹たちと、笑い声をたてて話し興じたりした。……知也はいちども来なかったし、家人のあいだに知也の話しの出ることもなかった。しかし裏では双方から交渉が進められていたようである、それはときおり文代の口うらに現われた。

「わたくし承知してあげたわ、お姉さま」

八月になってからの或る夜、隠居所にいる信乃のところへ来て、文代が例の鼻を反らせながら云った。

「なんど断わってもきかないんですもの、熱心にほだされたし、お姉さまもおしあわせになるんだし、このへんがみきりどきだと思ったのよ」

「それは、いつかお話しのあった方」

「ええ、武井という人よ、名は武右衛門というので、わたくしこれがいやだったの」文代は唇をへの字にして、妙な声で云った、「――武井武右衛門でござる、ええ武右衛門でござる」