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ものおもうあし

もの思う葦

太宰 治

――当りまえのことを当りまえに語る。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,430 字 · 42 页

青空文庫

「衰運」におくる言葉

ダス・ゲマイネに就いて

「衰運」におくる言葉

ひややかにみづをたたへて

かくあればひとはしらじな

ひをふきしやまのあととも

右は、生田長江のうたである。「衰運」読者諸兄へのよき暗示ともなれば幸甚である。

君、あとひとつき寝れば、二十五歳、深く自愛し、そろそろと路なき路にすすむがよい。そうして、不抜の高き塔を打ちたて、その塔をして旅人にむかい百年のちまで、「ここに男ありて、――」と必ず必ず物語らせるがよい。私の今宵のこの言葉を、君、このまま素直に受けたまえ。

ダス・ゲマイネに就いて

いまより、まる二年ほどまえ、ケエベル先生の「シルレル論」を読み、否、読まされ、シルレルはその作品に於いて、人の性よりしてダス・ゲマイネ(卑俗)を駆逐し、ウール・シュタンド(本然の状態)に帰らせた。そこにこそ、まことの自由が生れた。そんな所論を見つけたわけだ。ケエベル先生は、かの、きよらなる顔をして、「私たち、なかなかにこのダス・ゲマイネという泥地から足を抜けないもので、――」と嘆じていた。私もまた、かるい溜息をもらした。「ダス・ゲマイネ」「ダス・ゲマイネ」この想念のかなしさが、私の頭の一隅にこびりついて離れなかった。