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ものおもうあし

もの思う葦

太宰 治

――当りまえのことを当りまえに語る。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,430 字 · 42 页

青空文庫

最も日常茶飯事的なるもの

蟹について

わがダンディスム

「晩年」に就いて

最も日常茶飯事的なるもの

「おれは男性である。」この発見。かれは家人の「女性。」に気づいてから、はじめて、かれの「男性。」に気づいた。同棲、以来、七年目。

蟹について

阿部次郎のエッセイの中に、小さい蟹が自分のうちの台所で、横っ飛びに飛んだ。蟹も飛べるのか、そう思ったら、涙が出たという文章があった。あそこだけは、よし。

私の家の庭にも、ときたま、蟹が這って来る。君は、芥子つぶほどの蟹を見たことがあるか。芥子つぶほどの蟹と、芥子つぶほどの蟹とが、いのちかけて争っていた。私、あのとき、凝然とした。

わがダンディスム

「ブルウタス、汝もまた。」

人間、この苦汁を嘗めぬものが、かつて、ひとりでも、あったろうか。おのれの最も信頼して居るものこそ、おのれの、生涯の重大の刹那に、必ず、おのれの面上に汚き石を投ずる。はっしと投ずる。

さきごろ、友人保田与重郎の文章の中から、芭蕉の佳き一句を見いだした。「朝がほや昼は鎖おろす門の垣。」なるほど、これに限る。けれども、――また、――否。これに限る。これに限る!

「晩年」に就いて

私はこの短篇集一冊のために、十箇年を棒に振った。