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わがまち
わが町
織田 作之助
「文藝 第十巻年十一号」改造社、1942(昭和17)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,869 字 · 52 页
「他あやん、また喧嘩したんやなァ。」
二軒並んだ黒焼屋の店先へ、器用に夕刊を投げこみながら、そう言うと、
「さいな。あんまり現糞のわるい事言やがったさかい……。」
しかし、――他吉という男はど阿呆や、われが七年もいて一銭の金もよう溜めんといて、娘の婿を懲りもせんとマニラへ行かす阿呆があるかと言われて、随分腹が立ったからとは、さすがに子供相手に語りも出来ず、
「お初に告わんといてや。」
「さあ。どないしよ?」
「子供だてら生意気な言い方しイないな。――どや、しかしもう、犬に吠えられたかて、怖いことあれへんか。」
「もう馴れた。」
「そか、そらええ。次郎ぼん、なんぼでもせえだい働きや。人間はお前苦労せな嘘やぜ。おっさんら見てみイ。ベンゲットで……。」
「他あやんもっとほかの話してんか。ペンケトの話ばっかしや。〆さんの話の方が余っ程おもろいぜ。」
〆さんとは河童路地にいる落語家の〆団治のことだ。
「そら、向うは商売人や。――どや、豆糞ほど(少しの意)俥に乗せたろか。」
「なんじゃらと巧いこと言いよって……。心配せんかて良え。他あやん喧嘩したこと黙ってたるわいな。」
そして、早く配ってしまわねば叱られるさかいと、駈けだして行くのを、他吉は随いて行って、