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イエスでん
イエス伝
矢内原 忠雄
マルコ伝による
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 220,119 字 · 436 页
と怒りの言葉を投げつけ給うた(一一の一二―一四)。無花果の果の熟する季節は五月の末から六月にかけてであり、過越の祭りは三月の末から四月の中ごろまでの間ですから無花果が熟するにはまだ季節が早過ぎる。それだのに、「今後いつまでも果がなるな」などと憤慨せられたのは、イエス様の方に無理があると小道徳家は言うかもしれない。しかし元来無花果の樹は葉の出る前に実がつくものだから、葉のある無花果を見て「おや、早熟の果がなっているかもしれない」と思われたのはきわめて自然なことであり、往って見たところ果がないので「何だ、見かけ倒しだ。こんな樹はだめだ」、とおっしゃったのも、少しも不自然ではありません。しかもイエスはただちに一つ重大な実物教訓をこの樹に見いだし給うたのです。無花果はイスラエル国民の象徴としてしばしば用いられました。かつて預言者エレミヤは佳き無花果と腐った無花果と二筺を並べて、神の聖意に順う者をば佳き無花果、不信仰の者を腐った無花果に譬えたことがありますが(エレミヤ二四)、今イエスはこの葉ばかり繁って果のない無花果をもって、祭司、学者など偽の指導者を諷し給うたのです。