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クリティシズムとにんしきろんとのかんけい

クリティシズムと認識論との関係

戸坂 潤

「学芸」1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,091 字 · 50 页

青空文庫

否定の大用は媒介することではなくてはならない。この場合の否定は媒介のための否定だ。論理学的抽象に於てはそう云っていいだろう。――諸文化作品の間を、作品と作者との間を、諸文化領域の間を、相互に媒介するものが、クリティシズムに独特な職能であることを注目しよう。私は今一二の場合をとってこれの例証を与えることは出来ない。何となれば総てがその例だからだ。普通、批評は一定既成の作品に関する批評でなくてはならぬと云われている。だが『戦争と平和』の批評は勿論『復活』や『アンナ・カレーニナ』との連関なしに行なわれ得ない。『戦争と平和』の批評はやがてトルストイ自身に対する批評とならざるを得ない。だがそれは又直ちにトルストイとドストエフスキーとの比較ともなる(メレジコフスキーの批評の如き)。人々はこの二人をロシア社会変動の鏡として見較べざるを得なくなる。するとドストエフスキーは又トゥルゲーネフとも較べられねばならぬ。『悪霊』は『父と子』に較べられねばならぬ。すると又更にプーシキン(『大尉の娘』のプガチョフを見よ)の如きを思い起こさねばならぬだろう。等々。かくて『戦争と平和』