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トコヨゴヨミ
トコヨゴヨミ
田山 花袋
「早稲田文学」1914(大正3)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,449 字 · 38 页
矢張、樺の林や白楊や白樺などで取囲まれてあった。空は広く星はキラキラと煌いていた。
「そっくりだ、そっくりだ、こういう人間はいくらもいる。」
読みながら勇吉は何遍となくこう繰返した。
「こう書けば好いんだ。」
こんなことを言ったかれは、昂奮して膝を拍った。かれは自分の逢った人間を頭の中に繰返して見た。
「あれもそうだ、あれも好い、あいつも書ける。」こう言ってまた膝を叩いた。
「そうだ、そうだ!」
こう言っては、また深く読み耽った。二三時間の中に、かれはすっかりそれを読み尽して了って、中で気に入ったものをもう一遍読みかえしたりした。「是非、やって見よう。」つぶやくようにかれは独語した。
夜遅くついた旅客の馬の鈴の音がちゃらちゃらと静かに窓の下のところでした。勇吉は窓を明けて見た。広い空には星が煌々とかがやいていた。
三
確かな計算を立てて、少し耕しかけた田地を安くある人から買って、日雇取に頼んで開墾に着手し始めた。自分は矢張薬売に遠く出かけて行ってはいたが、兎に角勇吉は百姓になろうと決心した。それより他に自分の出て行く道はないとすら思った。旅から帰って来て自分の荒蕪地が少しずつでも開墾されて行っているのを、見るのは楽みであった。