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トムきちとほうせき
トム吉と宝石
小川 未明
「日の出 1巻2号」1932(昭和7)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,254 字 · 9 页
それよりか、ただ、トム吉は、
「どんなようにいったら、うまくだまして、あの曲玉を自分のものにすることができるだろう。」
と、考えていました。
トム吉は、渺々とした砂漠の上に、あらわれた白い雲を仰ぎながら、
「人間の運命なんて、わからないものだ。いま二人は、こうして同じように貧乏をしているが、これから、あちらの町へ着いて、あの曲玉が、宝石商に売られたら、そのときから、この男は、もう貧乏人でなく、大金持ちになれるのだ。そして、自分は、やはり、このままの姿であろう。」
と、思ったのでありました。
そのうちに、日数がたって、砂漠も通りすぎてしまいました。ある日の晩方、二人は、前方に、紫色の海を見たのであります。
「あ、海だ!」
「海だ!」
二人は、同時に叫びました。赤い夕日は、ちょうど波間に沈もうとしています。二人は、遠く歩いてきた道をかえり見ながら、岩の上に腰を下ろして休みました。押し寄せる波が、足もとに砕けて、引き返しては、また押し寄せているのです。
トム吉にも、また、若者自身にも、おそらくわからなかったことであったろうが、若者は頸にかけた糸をいつのまにかはずして、人さし指にはめて、くるくるとまわしていました。