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マクシム・ゴーリキイによってえがかれたふじん

マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人

宮本 百合子

「文学評論」1936(昭和11)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,801 字 · 20 页

青空文庫

祖母の言葉はいつもその誠実さと、人生に対する智慧でゴーリキイの心に沁み透るのであった。このような命にみちた言葉がゴーリキイの荒い少年・青年時代を通じてどんな作用をも営まなかったと云えるであろうか。

靴屋の見習小僧にやられたゴーリキイが、火傷をして祖父の家に帰された。その時、九つばかりであった彼は、同じ建物の中に住んでいるリュドミラという年上の跛足の女の子と大仲よしになった。二人は湯殿の中へかくれて本を読み合った。リュドミラの母親が毛皮商のところへ働きにゆき、弟が瓦工場へ出かけてしまうと小さいゴーリキイはリュドミラの家へ出かけた。そして「二人は茶をのんでその後で口やかましいリュドミラの母に気づかれないようにサモワルを水で冷しておいた。」そういう時、十四のリュドミラはませた口調で云うのであった。

「私たちはまるで夫婦みたいに暮しているわね。ただ別っこに寝るだけで。それどころかあたし達の方がずっとよく暮してるわ。――何処の旦那さんも奥さんの手伝いなんかしないんだもの。」

「智慧のあるおばあさん」が時々レース編をしながら仲間に加わった。そして楽しそうに云った。