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マーカス・ショーとレビューしききょういく

マーカス・ショーとレビュー式教育

寺田 寅彦

「中央公論」1934(昭和9)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,879 字 · 18 页

青空文庫

例えばヴァイオリンのE線だけによる協奏楽というものが、もしあったとしたら、丁度こんなものではないかという気がした。テンポにもアダジオやアンダンテはあってもアレグロがなく、表情にもフォルチシモがなく、そうかと云ってピアニシモもなかった。

ウィンナ舞踊はそういう意味では一番「音楽的」であったかもしれない。テンポにもエキスプレションにも少なくも理論的には相当な振幅はあった。ただ惜しいことには至芸にのみ望み得られる強い衝動が欠けていた。アメリカン・レビューにはそういう古典的な意味での音楽などはない代りに、オリンピックのグラウンドや拳闘のリンクに見らるる活力の鼓動と本能の羽搏きのようなものをいくらかでも感ずることが出来るのであった。

それほどにも国々の国民性がこんな演芸の末にまで現れるというのは面白いよりはむしろ恐ろしいことであろう。

連句をお休みにしてその代りにレビューを見物しながら、この二つの芸術の比較といったようなことを考えてみた。両方に共通な点も色々ある。しかしそういう共通点だけから見ると、連句の方はレビューとは比較にならぬほど洗煉されたものである。