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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
それは兎も角、今もいう様に兇器が石膏像であったこと、死体をピアノの中へ隠したことなどから考えると、この殺人は決して準備されたものではない。恐らく犯人にとっても思いがけない出来事なんだ。まさか殺すつもりではなかったのが、ついこんな大事件になってしまった形だ。だが、それだから一層探偵の方は面倒なんだ。準備された犯罪は、どこかに計画の跡がある。その跡をたどって行けば、何かをつかむことが出来る。今度のはそれがまるでないのだからね」
「でも証拠という証拠が皆山野夫人を指さしているじゃありませんか」
「まあ待ち給え、まだ少し残っている。議論はあとにして兎も角一応説明してしまおう。僕もまだ忙しい身体なんだ。次はこの三通の手紙だ。これが又色々なことを教えてくれるのだよ。封筒が二つ、葉書が一つ、差出人は表にはどれもKとあるばかりだが、こちらの封筒の中味には北島春雄という本名が記してある。気味の悪い前科者が又一人事件に加わって来た訳だ。この北島というのはつい十日ばかり前に刑務所を出たばかりの前科者なんだよ。君は三千子さんをよく知っているのだろうが、随分だらしのない娘だね。