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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

髪の結い方、化粧の仕方、洋服の着こなし、これだけを見ても、どんなに技巧のうまい女だか分る。それにこの巧な表情を見るがいい、これは決して生地のままの三千子さんじゃない。舞台に上った役者の顔だ。丁度隣に小間使の小松が竝んでいるが、面白い対照だね。この方は正反対に無技巧だ。着物から頭から、無表情な顔つきまで、すっかり昔流の日本娘だ。だが、こういうおとなし相な女は、思い込むと随分突飛なことをやり兼ねない。近眼と見えて眼鏡をかけている。それに眉が見えない。眉をそっているのは妙だね。生れつき薄い眉を隠すためなんだそうだが、何だか嫁入をした女の様な感じだね。薄い眉、アア僕は薄い眉を持った女を知っているよ。そいつは思い出しても恐しい奴だった」

明智は段々雄弁になって行った。何か非常にうれしいことでもある様子だった。併し、聞者の紋三は相手の饒舌が何を意味するものか、一寸見当がつかないのだ。彼は北島春雄という男から三千子に当てた三通の手紙をおもちゃにしながら、ふと小松の不思議な失踪について考えた。そして、話の様子では、もしや明智は小松を疑っているのではあるまいかと思った。