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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
だがもう駄目だ。己はとうとうつかまってしまった。刑事に泣きついてやっとこの手紙を書く暇をもらった。いいたいことは山程もあるが、もう時間がない。ただ一つ約束して置くことがある。己は何年食い込むか知らぬが、牢を出たら誓って復讐してやる。己は今からその日を楽しみにしている。貴様も首を洗って待っているがいい。……
もう一つの封書は、その十日程前に書かれたもので、それにはたった一度でいいから逢ってくれという、哀訴歎願の言葉が綿々と書きつらねてあった。
葉書には三月二十七日の日付があった。三千子変死の一両日前に届いたものだ。恐らく彼は刑務所を放免されると、その足で郵便局に立寄ったのであろう。鉛筆の走り書きで、当事者にしか分らない簡単な、併し恐るべき文句が認めてあった。
お喜び下さい。やっとお目にかかれる様になりました。近日中に是非お目にかかってお約束を果すつもりです。例のお約束を。K
「こんな葉書を受取って黙っていたのですね。怖くなかったのでしょうか」
紋三は読み終って不審をはさんだ。
「僕もそれを考えたのだが、ひょっとしたら山野さんには打開けてあったかも知れない。