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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
時々ホウ、ホウと怪しげな鳥の鳴声が聞えて来た。
「オオ、兄貴、オオ、兄貴、寝たのかえ」
大樹の根許から、低い含み声が湧いた。そして、そこに敷き捨ててあった、腐ったこもがムクムクと動いた。一見してはただ一枚のこもが捨ててある様に見えるのだが、実はその下に一人の宿無しが出来るだけ身体を平べったくして寝ていたのだ。
「起きてる」
どこからか、もう一つの声が答えた。同じ様に圧し殺した囁き声だった。
「遅いじゃねえか。餓鬼共がよ。どじを踏みやしめえな」
「大丈夫、慣れてらあな。まあ寝ているがいい」
それ切り声はしなくなった。こもは元の様に、一枚の捨て菰に過ぎなかった。
暫く沈黙が続いた。雨雲が低くたれて、死んだように風がなかった。薄気味の悪い静けさだった。
やがて、かすかにかすかに物のきしる音が聞え始めた。それがほとんど十分間も絶えては続き、絶えては続きしていたが、五重の塔の大きな扉がそろそろと開いて、その真黒な口の中から、二人の青年が忍び出た。二人共荒い飛白の着物を着て、学生帽を冠っていた。
「誰だい。アア、お前達か、またうめえ仕事をやったな」
菰が動いて、最前の声が囁いた。