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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

これは何か為にする所があって、態と指紋をふきとったのではないでしょうか。すると、ここにある分だけ拭取ってなかったのはなぜでありましょう。それはこの分に限ってそうしてはならなかったからです。つまりこれだけは三千子の持物ではないのです。巧に用意された偽証なのです」

紋三は何だかうれしい様な気持だった。彼の想像の当っていたことが、段々明かになって行くのだ。

「その証拠には、この指紋の残っている化粧品は、贅沢屋の三千子の持物としては、少し地味な好みですし、この過酸化水素キュカンバーだとか、過酸化水素クリームなどは、どちらかといえば油性の人に適当なものですが、三千子は反対に青白いすさんだ皮膚だったということですから、全く使用しなかったとは断言出来ませんけれど、少しふさわしくない感じです。それから色白粉ですが、青白い人は薔薇色のを用いるのが普通であるにも拘らず、ここにある水白粉は赤ら顔に適当な緑色のものです。又花つばき香油なんていうものは、洋髪には余り使いません。つまり、どちらから観察しても、これらの化粧品は三千子さんの常用したものではない。どこか外の所から持って来て三千子さんの部屋へ置いたものに相違ないのです」