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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

明智の説明は段々細い点に入って行く。

「化粧品が準備された偽証であることは、この吸取紙によっても分ります。これもやっぱり偽証の一つなのです」彼は桃色の吸取紙を示した。それの表面には拇指のインキの指紋がハッキリと現れていた。「これが三千子の書きもの机の真中にのせてあった。態と目につく場所へ置いたことは一見して分るのです。それから、ここに文字を吸取った跡がかすかに残っている。一寸見たのでは、ポツポツと点線になっていて読めませんが、鉛筆で跡をつけて見るとハッキリした文字が現れて来る。だが、文句に注意すべき点はない。ただ女らしい文章の一部分が現れているに過ぎません。ところで、ここに別に三千子の筆蹟があります。これと吸取紙の筆蹟と比べて見ますと、両方とも若い女らしい手で、よく似ていますが、ただこうして見たのでは本当のことが分らない。吸取紙の方のは左文字ですからね」

明智はそこに用意してあった懐中鏡を取ると、吸取紙の上にかざして、聞手の方に見える様にした。田村検事などは、すぐそばまで顔を持って行って、感心した様に二つの筆蹟を見比べるのであった。

「こうして右文字に直して見ると全く別人の筆蹟です。