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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
「それはそうと、あなたは養源寺のお住持さんを御存じなの?」
紋三はその時少からず狼狽したが、同時にある馬鹿馬鹿しい妄想がふと彼の心に萌した。
「イエ、別に知っている訳でもないのですが、然しどうしてそんなことをお尋ねなさるのですか」
「私最前養源寺の前であなたにお逢いしましたのよ」夫人はおかし相にいった。「門の空地の所ですれ違ったのですけれど、あなたはすっかりすまし込んでいらしったわね。あのお寺のお住持はやっぱり山野の同郷の人で、それは変り者ですの。三千さんのことで、私も一寸お寄りして今帰り途なのですが、あなたはあのお住持がお国の方なことを御存じないの?」
「そうですか。ちっとも知りません。僕は昨夜から狐につままれた様な気持なんです。実際どうかしているのですね、奥さんにお逢いして知らずにいるなんて。この頃何だか頭が変なのです」
「そういえば妙に考え込んでいらっしゃるわね。何かありましたの?」
「奥さんはお読みになりませんでしたか。今朝の新聞に千住の溝川から若い女の片足が出て来たという記事がのっていましたが」
「アアあれ読みました。三千さんのことがあるものですから、私一時はハッとしましたわ。