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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
結局昨夜の騒ぎは若い店員の幻に過ぎなかったのかと思われた。
盗まれた品物もなく、曲者の忍び込んだ箇所もない。その上若い番頭が主張する様な不具者なんか、昨日閉店以前に入った形跡もなく、今日開店後出て行った様子もない。(そういう不具者なればだれかの目につかぬはずはないのだが)だから若い番頭の見たのは、単に彼の幻覚に過ぎなかったか、それとも又、少年店員の中のいたずらものが、臆病な彼をおどかしてやろうと、態と人形の真似なんかしていたのかも知れない。という様な事で、結局発見者が同僚達の嘲笑をかったばかりで、この事件は落着しようとしていた。
だが、その日のお昼頃になって、例の三階の呉服売場に途方もない騒ぎが起った。
桜の造花の下の三美人人形は、まだ最近飾られたばかりなので、三階中の人気を集め、そのまわりは、いつも黒山の人だかりがしていたにも拘らず、不思議とだれもそこへ気づかなかった。大人達にとっては、恐らくその着想が、余りにも奇抜過ぎたのであろうか、それを発見したのは二人の小学生徒であった。
彼等はおそろいの紺サージの学生服をつけて、柵の一番前の所に立って人形を見上げていた。