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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

もう一つ奥にはこの様ないまわしい彼の正体が隠されていたのだ。小林紋三に尾行され、百貨店の番頭に発見された、あの一寸法師こそこの男であったに相違ない。彼女を脅迫している男と、三千子の死体を切断して罪深い悪戯をやった男とが、全く同一人物であることを、今まで気づかなんだのは、むしろ迂濶千万であった。彼が十年という長い年月、切ない恋を打開けないでいたのも、この様な犯罪事件のかげに隠れて、彼女の弱身につけ込んで、その思いをとげようとしたことも、彼が見るも恐しい畸形児であったとすれば、誠に無理でない訳だ。

相手が一寸法師と分ると、いかに覚悟を定めているとはいえ、彼女はもう我慢が出来なかった。こんな怪物に、少しの間でも妙な魅力を感じていたかと思うと、彼女はゾーッと背筋が寒くなった。彼女はしゃ二無二怪物の腕をふりもぎろうともがいた。

だが、相手は彼女が悟ったと見ると、一しお力を加えて犠牲者を抱きすくめた。畸形児とはいえ死にもの狂いの腕力に、か弱い女の百合枝がどう抵抗出来るものではなかった。

「今更逃げようたって逃すもんか」彼は力み声をふりしぼった。

「声を立てるなら立てて見るがいい。