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いちねんのけい

一年の計

佐々木 邦

「面白倶楽部」1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,627 字 · 14 页

青空文庫

「二十年来飲んだ酒だ。昨日の今日と然う手の平を返したようにやめちゃ人情に背くよ。これから大晦日までゆっくり名残りを惜しませておくれ。お前だって二十年もつけ続けた白粉をやめるとなったら、少しは未練が出るだろう?」

と片岡君は理窟を言い出した。

「白粉とお酒とは違いますわ」

「品物は違っても道理は同じことだ。そんな不景気な顔をしていないで早く出しなさい」

「それなら真実にお正月からやめて下さいますか?」

「やめるとも。来年は厄年だ。頼まれても飲まない。今度のは真剣だから、自然こんなに大切を取るのさ」

「それじゃ大晦日までお上りなさいませ。丁度それぐらい残って居りますわ」

と細君はなまじ争って来年も飲むなぞと旋毛を曲げられては困ると思ったから、快く晩酌を許した。

これで片岡君は数日の小康を得た。

「斯う念を入れて置けば未練もなくなる」

と言って毎晩余命を楽しんだ。大晦日には日頃好む肴を悉皆用意させて、宵の口から十二時まで飲み続けた。

「これが人生最後の盃だ」

といよ/\お積りに達した時除夜の鐘が鳴り始めた。

「お名残り惜しゅうございましょう」

と細君が笑った。

「いや、今度は決心が堅い。