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いちねんのけい

一年の計

佐々木 邦

「面白倶楽部」1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,627 字 · 14 页

青空文庫

「いゝえ、思い立ったが吉日と申します。今晩はもうそんなに召上ってしまったんですから、明日からおやめ下さい」

「明日からやめても二十五日に忘年会があるぞ。忘年会が。俺は幹事だ」

と片岡君はお株を始めた。宴会には必ず幹事か発起人を承わっている。到底飲み頭だ。

決心から実行までの期間、片岡君はこれがこの世の飲み納めという考えがあるから無制限に飲む。細君も好きなお酒をやめてくれるのかと思えば気の毒が先に立つ。死刑囚には望み通り叶えてやるのが人情の自然で、機嫌好く飲ませる。片岡君は或はこの辺の兵法を弁えていて時々発心するのかも知れない。兎に角忘年会まで一週間大いに飲んだ上に忘年会で又大いに飲んだ。幸い何処へも落ちずに家へ帰り着いたのは腰が立たなくなって自動車に乗って来たからだった。

「お尚や、今夜は飲むよ」

とその翌晩片岡君が晩酌を要求した時、細君は、

「あなた、それはお約束が違いますよ」

と無論反省を促した。

「年の暮は半端でいけない。来年からやめる。此年は何うせ飲んだんだから、このまゝ完全に飲んでしまって、年が改まってから綺麗さっぱりとやめる」

「仕様のない方ね」