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ななかいのじゅうにん
七階の住人
宮本 百合子
「文芸春秋」1926(大正15)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,128 字 · 15 页
――寄宿舎らしい漫画的おかしさで、伸子も笑った。
「さて、もう一つ申すことがあるのですが――洗濯場で昨日シーツを一枚めちゃめちゃにして突込んであるのが見つかったのです」
ミス・ハウドンは、後を振向き、彼女の秘書のような役をしている学生の一人に何か合図をした。
「これなのです――誰か心覚えがありますか」
白いブラウズを着たその娘は、指図とともに腕一杯に敷布を一同の前に拡げ示した。敷布は、真中に大きい汚染があり、きつい火熨斗(のし)を掛けそこなった焼けこげがついている。伸子は、何だか正視するのが辛いように感じた。
「あなたがた、若しお母さんの家にいらしったら、シーツをこんなにして知らん顔でいますか? そうではないでしょう? 私はここのお母さん役なのだから、家にいると同じに振舞って欲しいのです」
ひどい様子の敷布は、煌々としたシャンデリアの下で凝っと拡げられたままだ。
「どうか隠しだてはしないで下さい。――本当に心あたりのある人はありませんか」
伸子は、余りいつまでもきたない敷布を見せられるので、次第に苦々しく腹立ちを感じた。何故そんなことになったか、誰でも見当はつく。