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ふざいじぬし

不在地主

小林 多喜二

一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页

青空文庫

皆笑ってしまった。

聞き易いテキパキした調子で、時々笑わせながら、色々のことを話してくれた。

――秋田には「青田を売る」ということがある。それは新らしい小作戦術で、立毛差押や立入禁止など喰らいそうに思うと、小作人が先手を打って、夏頃に、出穂を予想して、青田のうちに商人に売ってしまうのだった。金にして持ってしまえば、こっちのものだった。――どうだい、やってみないか、と荒川が笑談のように云った。

近辺の農村を廻って歩いていると、農村の生活水準がだんだん下って行くのが分る。益※(二の字点、1-2-22)下がって行く。いくら村長や警察署長が「農村の美風」をかついで、ムキになったって、食えなくなれば、どうしても地主様に「手向い」しなければならなくなる。

それに、こうなって来ると、困るのは水呑み百姓ばかりでなしに、なまじッか十町、二十町歩位の田畑を持っている「地主」で、反当りで計算してみても、灌漑費、排水費、反別割、其他の税金、生活費用を見積ると、そこから上る六、七斗の小作料では引き合わなくなってきていた。――田に修繕を加えて、少しでも上り高を多くしようとすれば、どうしてもそれを拓殖銀行へ抵当に入れて「年賦償還」