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アラスカのひょうが

中谷宇吉郎紀行集 アラスカの氷河

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎紀行集 アラスカの氷河』。同一底本的分册已合并为一书。收入:アラスカの氷河、永久凍土地帯、黒い月の世界、白い月の世界、満洲通信、アメリカの旅、アラスカ通信、ウィネッカの秋、ウィネッカの冬、ツンドラへの旅、ネバダ通信。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 122,039 字 · 248 页

青空文庫

それを未開の状態と言ってしまえばそれまでのことであるが、この未開の自給自足の生活が持つ強味は、今度の大戦争で初めて身に沁みて味わわされたわけである。

草原の王者になる気はなくても、一度この草原地帯を訪れた人は、誰でも強い魅力を感ずるそうである。私も勿論その仲間の一人である。シンガポールやセイロンの華やかな熱帯の色彩も美しいには美しいが、ツンドラの秋やこの草原のような魅力は感ぜられない。その原因は低温科学を専攻しているからとも言えないようである。強いて求めれば、高緯度地帯の景色が持つ独特の清潔さというものが、魅力の原因であるのかもしれない。

その話をS氏にしたら、S氏は笑いながら次のような話をしてくれた。

いつかこの土地を通る国際列車の中で誰かが窓外の草原を眺めながら「いい景色ですね、こんな所で牧場でも持って、人間から離れて暮したらいいだろうね」と言った。そしたらすぐ前に坐っていた男が、やにわに手を振って「駄目です、駄目です、実は僕はやってみたんです」と言って、大笑いになったことがあったそうである。