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アラスカのひょうが

中谷宇吉郎紀行集 アラスカの氷河

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎紀行集 アラスカの氷河』。同一底本的分册已合并为一书。收入:アラスカの氷河、永久凍土地帯、黒い月の世界、白い月の世界、満洲通信、アメリカの旅、アラスカ通信、ウィネッカの秋、ウィネッカの冬、ツンドラへの旅、ネバダ通信。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 122,039 字 · 248 页

青空文庫

そこまではたいへん結構な話であったが、世の中に万全ということはない。その結果として発生したものは、スモッグである。ひどい日には、通りの向い側の家がよく見えず、眼はちかちかと痛んで、真赤に充血する。ロスアンゼルスの大学の教授で、子供の健康のために、スモッグを逃げて、スタンフォード研究所へ転勤した知人もある。ところがアメリカのスモッグは、年々に猛威をたくましくするので、昨年あたりから、スタンフォードの付近まで、スモッグに悩まされるようになった。クリスマス休みに、ちょっと山を降りて、大陸へ渡り、スタンフォードを訪ねた時に、この知人は、「俺がスモッグをもってきたと皆に責められるので弱るよ」と苦笑していた。シカゴなども、この二、三年のうちに、ひどいスモッグに悩まされるようになっていた。

物質文明の進歩と大気の汚染とは、光と影のようなもので、影だけ簡単に消すというわけにはいかない。ものを燃すことを止めるわけにはいかないからである。それでスモッグの研究には、「燃焼による凝結核の生成」という問題が基本になる。ところがそういう研究にも、マウナ・ロアのような人里離れたところ、すなわち燃焼のないところが、非常に有利である。