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まるのうち
丸の内
高浜 虚子
「東京日日新聞」1927(昭和2)年3月15日~31日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,875 字 · 46 页
今までに見て来たようなわい小なものとは選を異にしている。それ/″\の建物の屋根は大空に聳え立っている。
高架鉄道になった今日から見ると、是等の建築の屋根が一番問題になる。それ等の旅人はもとより、日々通勤する人(遠くは逗子、鎌倉より、近くは大森、品川より)の眼を知らず識らずの間に楽しませるものは、これ等の屋根の形状である。千篇一律のものでは飽く。俗悪怪奇なものは厭わしい。丸ビルの如き切り取ったような四角のものもあってよかろうが、又参差として塔の林立せるが如きものもほしい。それにしても、帝国ホテルの屋根は矢張り好もしい。屋根の中央に突立った棒の尖にあるものは、何にかたどったものか知らぬがただ面白い。私の眼には意味が無く面白い。又度々引合いに出すが帝劇の屋根は翁の像のあった時代がよい。何故に震災後あれを撤去したのであろう。震火災に破損したためであろうが、何故に復旧して建てないのであろう。西洋建物にああいったものは不調和だという議論があっての事か。それなら第一あの舞台で在来の歌舞伎劇をやるのがおかしいという事になる。あの舞台に花道がとりつけてあるのがおかしいという事になる。