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まるのうち
丸の内
高浜 虚子
「東京日日新聞」1927(昭和2)年3月15日~31日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,875 字 · 46 页
其所らあたりを
「君、百姓が出来るのですか。」と俳人はこの男の容子を見ながら危ぶむようにいった。
「出来るだろうと思います。」とその男は空しく口を開いて笑った。
私はそのかぼそい細君を見た。弟というのも岩畳という程ではなかった。
「何日かかります。」
「五十六、七日かかるそうです。」
「それ位で行けるのですか。」
「喜望峰を廻って行くとその位だそうです。」
「喜望峰!」と一同は皆又男の顔を見た。
「併し五十六、七日で行けるとすると遠いようでも近いものだな。もう少し飛行機が発達すると或は二、三日で行けるようになるかも知れぬ。ちょっと東京見物に帰って来るという事も出来るようになるかもしれぬ。」
「そうです。」とその男も微笑した。
そんな話をしているうちに食堂は人で一杯になった。その食堂の一テーブルはこんな惜別のまどいが比較的長く占領していた。
其所らあたりを
或日の午後二時半頃から一時間ばかりのひまを得て、丸ビルを出てそこらあたりを歩いて見た。先ず東京駅降車口前に行く。ここに朝のうちは沢山に列を作って客待をしている自動車――ちょっと見ると百台近くもあろうかと思われる――も、今は三分の一位に減っている。