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まるのうち
丸の内
高浜 虚子
「東京日日新聞」1927(昭和2)年3月15日~31日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,875 字 · 46 页
人々の嫉妬、排他、小智、頑冥等は今目のあたり見るところと何の差異も無かったろう。そんな世界がくりかえし巻きかえし展開せられ閉じられ、展開せられ閉じられして今日に及んで来たものであろう。
それから又そのいつの時代を切り離して見ても、その時代の人はその時代の文明を一番立派なものとして賛美していたろう。たとえば今博物館内の表慶館に並べてあるような贅沢の限りを尽した手文庫とか茶器とかいうものを座右に備えて、これ等の文明を誇りがに眺めつつあったものであろう。
古き時代の人が持つ誇りは近代人が持つ誇りであり又後代の人が持つ誇りであらねばならぬ。
生滅々為して地上に栖息している人の記録は昔と今と余り変りが無いともいえる。今行幸道路を隔てて見ゆる海上ビルデングのあたりには松平豊前が住まっていた。(嘉永年間)今海上ビルデングのあらゆる部屋にある文明と松平豊前の奥殿に籠っていた文明とを比べたらばどちらに軍配が上るかわからない。
鰻丼が出来て来た。
* * *
薄紅梅が一輪散った。