轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

「お艶! お艶!」

と呼ぶ声が水の層を通してだんだんはっきりと聞こえてきた。

あ! 栄三郎さまがおいでくだすった!

「は、はい――お艶はここにおりますッ!」

「お艶」

という最後の声が耳のそばで大きくひびいたので、お艶がはっと眼をあけてみると……。

栄三郎ではない――母のおさよが盆に何かのせて来て、しゃがんでいた。

「お艶、お前、好きだったよねえ。お汁粉ができたから持って来たよ。さ、起きておあがり」

おさよは娘をのぞきこんで、

「お前、なんだかうなされていたようだね」

「ええ、こわい夢……夢でよかった」

まだぼんやりして上身を起こしたお艶は、ほつれた髪を手早く掻きあげながら、眠りのなかで泣いていたものとみえて、巻いて枕にしていた座蒲団のはしが涙に濡れているのに気がつくと、そっとうしろへかくして悲しく笑った。

寝起きの頬に赤くあとがついて、男ごころをそそらずにはおかない悩ましさ。

母と娘、せまい幽室に無言のまま向かいあっている。

本所法恩寺橋まえ鈴川源十郎屋敷の一間である。

櫛まきお藤のさしがねで、刀渦にまぎれ、巧妙にお艶の身柄をさらい出した源十郎は、深夜の往来に辻駕籠を拾ってまんまと本所の家へ運びこんだまではよかったが……。