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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
01 乾雲坤竜の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页
火のよう――じんの声と拍子木。
それが町角へ消えてから小半刻もたったか。麹町三番町、百五十石小普請入りの旗本土屋多門方の表門を、ドンドンと乱打する者がある。
「ちッ。なんだい今ごろ、町医じゃあるめぇし」寝ようとしていた庭番の老爺が、つぶやきながら出て行って潜りをあけると、一拍子に、息せききって、森徹馬がとびこんで来た。
「おう! あなた様は根津の道場の――」
御主人へ火急の用! と言ったまま、徹馬は敷き台へ崩れてしまった。
土屋多門は鉄斎の従弟、小野塚家にとってたった一人の身寄りなので、徹馬は変事を知らせに曙の里からここまで駈けつづけて来たのだ。
何事が起こったのか……と、寝巻姿に提げ刀で立ち現われた多門へ、徹馬は今宵の騒ぎを逐一伝える。
――丹下左膳という無法者が舞いこみ、大事の仕合に一の勝ちをとって乾雲丸を佩受したこと、そして、さしたまま逃亡しようとして発見され鉄斎先生はじめ十数人を斬って脱出した……しかも、刀が乾雲丸の故か、斬られた者は、重軽傷を問わずすべて即死! と聞いて、多門はせきこんだ。
「老先生もかッ」
「ざ、残念――おいたわしい限りにございます」