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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

栄三郎様と弥生さまとが……と聞いてむちゅうで駈け出したお艶が、泰軒とつれだって千住をさして急いだ途中。

あの小塚原のあけ方、左膳と栄三郎が刃を合わせた。

四分六といつか泰軒が評したことばのとおりに剣胆二つながらに備えてはいても、何しろ左膳ほど刀下をくぐっていない栄三郎、ともすれば受け太刀になって、しかも手の甲をさいた傷口から鮮血はとどまるべくもなく、下半身を伝わって、いたずらに往来の土にしみる。それでも、物陰からかけるエイッ! ヤッ! という泰軒の気合いにわれ知らず励まされて、あれから五、六合はげしく渡りあっていたが、そのうちに! 誰ともなく加勢の声ありと聞きとった左膳は、長居はめんどうと思ったものか、阿修羅のごとき剣幕で近く後日の再会を約すとそのまま傾く月かげに追われて江戸の方へと走り去ったのだった。

お艶栄三郎、明けはなれてゆくうす紅の空の下でひさしぶりに手をとりあった。

お艶が、手拭を食いさいて傷の手当をしながらきくと、なるほど泰軒のいうとおり、栄三郎は今まで千住竹の塚の乳兄弟孫七方にころがりこんでいたものと知れて、お藤にふきこまれたお艶の疑念はあとかたもなくはれわたったが、なんのためにあんな嘘をついたのかとそれを思い惑うよりも、お艶はただ、すぐと栄三郎と家を持つ楽しい相談に頬を赤らめるばかりだっ