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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

しばらく物置の戸に耳をつけて表のかた、周囲に耳を傾けていたが、やがて、いま、屋敷は御用の騒動にのまれて誰も近づいてくる者もないと見るや、しずかに小屋のなかへはいって――すぐに出て来た。

言うまでもなく、源十郎と対談しているところへ、左膳と捕吏の剣闘が始まったので、こっそり部屋を脱けて出たおさよ婆さんであった。

手に、物置から取りだした鍬を握っている。

夕方鍬などを持ち出して、こんなところで何をするのか……と見ていると!

おさよは瞬時もためらわずに、やにわに鍬を振りあげて、小屋のかげ、椎の根元を掘りはじめたが――。

ふしぎ! 近ごろ誰かが鍬を入れたあとらしく、表面が固まりかけているだけで、一打ち、二打ちとうちこむにしたがい、やわらかい土がわけもなく金物の先に盛られて、おさよの足もとに掬い出される。

薄やみに鍬の刃が白く光って、土に食い入るにぶい音が四辺の寂寞を破るたびに、穴はだんだんと大きくなっていって。

はッ! はッ! と肩で呼吸づく老婆おさよ、人眼を偸んでこの小屋のかげに何を掘り出そうとしているのだろう……?

それは――。

過般、ある夜。

老人のつねとして寝そびれたおさよが、ふと不浄に起きて、見るともなしに、小窓から戸外の闇黒をのぞくと、はなれに眠っているはずの丹下左膳、今ちょうどそこを掘りさげて、