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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

どりゃ、そうと決まれば、こっちもそろそろ受持ちの飯炊きにとりかかろうかい」

ひとりごちながら、火打ちを切って手近の行燈に灯を入れる。

その黄暗い光に、ぼうッと照らし出された裏長屋の男世帯……。

乱雑、殺風景を通りこして、じっさい世にいうとおりうじくらい生きていそうな無頓着をきめた散らかし方だ。

お艶が家を出たあと、栄三郎がひとりで自炊していたところへ、相馬の旅から帰った泰軒がズルズルベッタリにいすわりこんだから、その無茶苦茶な朝夕、まことに思い半ばにすぎようというもの。

紙屑、ぼろ布、箸茶碗、食べかけの皿などが足の踏み立て場もなく散らかり、摺鉢に箒が立っていたり、小丼に肌着がかぶせてあったり、そして、腐えたような塵埃のにおいが柱から畳と部屋じゅうにしみわたって、男ふたりのものぐさいでたらめな生活ぶりをそのままに語っている。

勝手もとで、不器用な手つきで米をとぎだした泰軒先生、思い出してはしきりに、

「ウム! めでたい! こりゃあめでたいぞ!」

ひとりでさかんにめでたがりつつ、泰軒、ふとあがり口のべに絵木箱に、眼を留めて、

「オオ! きょうはだいぶ売れたようだな。